歯科医院は院長ワンオペが最強

この記事まとめ
(1)歯科医院は都市部で飽和状態となり、経営難で廃業する歯科医院が増加
(2)歯科医院が陥りがちな高コスト体質
(3)大規模VSワンオペ、新規開業ならワンオペ一択
(4)患者が求めているのは、治療のクオリティ
(5)ワンオペ歯科医院は不可能ではない
(注)この記事におけるワンオペとは、院長一人による運営・経営の意味であり、歯科施術のことではありません
(1)歯科医院は都市部で飽和状態となり、経営難で廃業する歯科医院が増加
歯科医院を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。
国内の歯科医院の数は2023年時点で、約70,000件を超えており、これは医科診療所に比べて非常に多い数字です。 先進国の中で比べても最も過密といえます。
特に都市部にあっては飽和状態にありながら、歯科医院の数は長年にわたり増加しています。
人口1万人当たりの歯科医数(2020年頃)
1位:東京都 約 14.5人
2位:徳島県 約 13.0人
3位:大阪府 約 12.5人
4位:福岡県 約 11.5人
5位:神奈川県 約 11.0人
2020年頃のデータでは、年間でおよそ1,000~1,500件程度の歯科医院が廃業しているとされています。
開業件数に比べると少ないですが、徐々に増えてきています。
歯科医院の廃業理由には、後継者不足、経営難、高齢化(引退)の3つに分けられます。
地方では、後継者不足、高齢化(引退)による廃業が多く、廃業による減少の穴を埋めるだけの開業は少ないのが現状です。
都市部では、歯科医院の数が多い、競争の激化、集客がうまくいかない、といった経営難が原因で廃業するケースが多数となりつつあります。
(2)歯科医院が陥りがちな高コスト体質
歯科医院の開業には莫大な投資が必要とされます。
開業後も、高額な医療機器の更新に高額な投資を続けていかなければなりません。
中規模歯科医院の平均的な開業の投資額では、
内装・リフォーム費用に2,000万円
医療設備費に2,000万円
初期広告費に500万円
賃料その他運営費におよそ500万円
少なくとも、5000万円の資金が必要になります
大規模歯科医院はこれより多く、小規模はこれより少ない投資額となります。
ほとんどの歯科医院はこれらを借入金で調達しますので、その元本と利息の返済も重くのしかかります。
この莫大な投資額は診療報酬の中から返済していくことになりますが、競争激化、患者の奪い合い、により診療報酬が思うように伸びず、院長の給料も出ない状態に陥っている歯科医院も見受けられます。
さらに昨今の物価高によって、歯科医院の運営コストは増加の一方です。
機器も材料も2~3割値上がりしました。
今後もますます経営環境は厳しくなることが予想されます。
歯科医院が高コストに陥るのは次に原因があります。
◆内装・リフォームにお金をかけすぎている
◆医療設備費がそもそも高額な上に、医療商社の担当者の提案を丸のみして過大設備となっている
◆毎月、新患数を増やさねばという恐怖観念から、広告会社への出費がかさむ
◆歯科医(勤務)、歯科衛生士が採用できず、人材募集会社への出費がかさむ
◆なんとか採用しても、人間関係やささいな出来事ですぐに退職する
◆残って欲しい人ほどすぐにやめていき、要領が悪く手のかかる人ほど長く残る
既に歯科医院を経営されている方、あるいは歯科医として勤務されている方、思い当たるところがあるのではないでしょうか
逆にこれらをすべて上手にコントロールできているなら経営者としての資質が備わっており、経営状態も良好だろうと思います。
(3)大規模VSワンオペ、新規開業ならワンオペ一択
質問です
次のA、Bでは、どちらの手取り収入(所得)が多いでしょうか?
A 歯科医(勤務)、歯科衛生士、助手を大勢揃えた大規模歯科医院の院長
B 歯科医一人で切り盛りするワンオペ歯科医院の院長
答えはほぼ同じです。
売上は当然、A大規模歯科医院が多いのですが、全ての経費を引いた後の手取りにすると大差はありません。
経済原則では、規模の拡大は手取り(所得)の増加につながります。
医療商社の担当者は、
「ユニットは歯科医師一人につき3台が標準です。周辺機器もその割合で用意しましょう」
と提案します。
経済原則でいうと理にかなっていますから、その提案を違和感なく受け入れてしまいます。
しかし、この経済原則通りにまわっていないのが、今の歯科業界なのです。
開業費用や医療機器の投資が過大になってしまうと、
◆新患が減る恐怖から広告を打ち続ける
◆ユニットを空けておかないように予約を限界まで詰めていれる
◆予約を詰めすぎて、少しでも患者が遅刻すると説教してしまう
◆短時間診療により、歯科医、衛生士、助手で連携不足となり、ミスが生じる
◆歯科衛生士や助手に自費治療の押し売りをさせる(院内が殺伐とする)
◆自費治療をゴリ押しする歯科医院と煙たがられる(口コミで書かれる)
◆保険と自費の患者で態度が豹変する(口コミで書かれる)
負のスパイラルに落ちていき、一体誰のために苦労しているのかわからなくなります。
実は、大規模歯科医院には、経営が火の車というところが少なくないのです。
(4)患者が求めているのは、治療のクオリティ
歯科医師会の調査によれば、患者は歯科医師に「治療のクオリティ」を求めています。
2014年の資料ですが、現在でもかわってはいないでしょう。

「そんなことはわかっている!」
お叱りを受けるかもしれません。
それでは、
「歯科医師が、適切な機材で、説明から治療まできちんと時間をかけて、治療にあたっていますか?」
と問われたらどうでしょうか
説明が歯科衛生士まかせだったり、治療方針をしっかり考える時間が持てない、といった状況になっていませんか
コストをかけるべきところは「治療のクオリティ」です。
歯科経営が厳しい時代だからこそ、歯科医院は、患者が求めていることに注力すべきです。
例えば、開業に際してやりがちなこととして、
「ホテルのロビーのようなエントランス」
「勢ぞろいした大勢のスタッフ」
「気持ちの良い挨拶と笑顔」
歯科医院開業コンサルや医療商社の担当者はここぞとばかりにここをプッシュします。
しかし、このようなことは、患者にとっては、
「そうであればなおよい」程度の付録のようなものです。
清潔感は当然ですが、過剰である必要はないのです。
口車にのって、カモにされないように気をつけて下さい。
(5)ワンオペ歯科医院は不可能ではない
経営能力に長けているならば大規模歯科医院にチャレンジしてみるのは良いでしょう。
しかし、これから開業するならば、ワンオペ歯科医院が最適です。
もし、大規模歯科医院の経営が長年の夢であるとしても、まずはワンオペ歯科医院から始めてみることをお勧めします。
ワンオペ歯科医院を成功させてそれを拡大していけば良いのです。
ワンオペ歯科医院で、必要なものに限定した機材、少ない人員による効率的な運営、患者との良好な関係の築き方、をノウハウとして培ってからの拡大がおすすめです。
「本当に、院長ワンオペで歯科医院を運営できるのか?」
おそらく20年前であれば、難しいか、経済合理性はなかったと思います。
それが、医療機器の進歩、DXの活用で可能になってきました。
◎投資額が少ない(必要なものは揃えるが過剰にはしない)
◎借入が少ない(毎月の返済が楽)
◎スタッフの管理が必要ない(治療と患者以外に無駄な気をつかわなくて良い)
◎スペースは最小限で良い(好立地を選びやすい)
◎初期に広告費は使うものの、患者の定着率を上げることで中長期の広告費は削減
◎自費治療を患者に無理強いしない(満足度を上げる患者の定着率アップ)
◎何より自分の生活やペースにあわせて働ける
実際に、ワンオペ歯科医院は増えており、背伸びしない経営で、経営状況も良好です。
院長ワンオペ、これから開業を目指すなら、ベストな選択です
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